−納豆は、食を彩る 主人公− >


第21回気仙沼大会《ダイジェスト版》
宮城県気仙沼市に194点が大集結。
第21回審査結果
日本一は愛知県の山下食品さん。

No90 20th鑑評会当日。早食い大会、納豆食堂、ねば〜る君!
No89 20th鑑評会前日。偕楽園に水戸黄門像。納豆記念碑にねばり丼。
No70 世界最小の納豆屋
毎日12個は至高の12個

No.164 ショートケーキ風ミニタルト
カラフルで可愛く出来ました☆
No.133 生ハムと黒豆のカナッペ
黒豆納豆が見事にマッチ!
No.117 シュー納豆
ブルーベリーと黒豆が絶妙☆












《 鑑評会情勢分析と最近の傾向について 》

全国納豆鑑評会は第22回京都大会を盛況のうちに無事終了した。

年々風格を増す全国納豆鑑評会は重みを増し成熟を極め、また、担当者が各自の持ち分をしっかり把握した動きを見せる大会運営も淀みなく素晴らしい。これは会長以下関係各位の日々の努力の積み重ねの賜物であり、見事と言うしかない。敬意を表したい。

今回、全国納豆鑑評会の22回の歴史を紐解いてみた。受賞納豆の特性やメーカーの真摯な姿が浮き彫りになって来て興味は尽きない。

過去22回の鑑評会に出展した納豆の総数は、3,192点。受賞した納豆数は265点であった。受賞率は8.30%。一割を切る狭き門だけに受賞の価値は高い。

《 今回の受賞傾向 》

今回の第22回京都大会では出展総数201点に対し、20の賞が授与された。1社ダブル受賞だったため、受賞したメーカー数は19社である。

今回の第22回から遡って3年、つまり昨年が21回、一昨年が20回、3年前が19回であるが、第19回以降受賞していているメーカーで今回も受賞したメーカーは、何と12社にもなった。予想外の多さである。

なおかつ5年前まで遡ると、つまり第17回以降で受賞しているメーカーで今回も受賞したメーカー数は、驚きの19社中16社である。85%近い高率の受賞率は筆舌に尽くしがたい。 過去5回に遡っての受賞経験メーカーが今回も受賞したのが85%と言う事は、受賞常連組が形成されてきている事に他ならない。

《 関西・東海地区の台頭 》

興味深いのは、関西・東海両組合が存在感を増してきた事である。 特に今回受賞の相沢食産(兵庫)は3年連続。藤原食品(京都)は2年連続である上に、鑑評会に出し始めて3年間で2回の受賞となる。今回賞は逃したが、京都の高橋食品工業も19回〜21回の3年間で4つの受賞、合計5つの賞を取っている強豪。15回〜18回で同一商品4年連続受賞を成し遂げて名を馳せた大阪のエイコー食品は今回4年ぶりの受賞を果たし5回目となった。

愛知の高丸食品は4回の受賞のうち、19回と20回の2大会で3回の受賞。同じく愛知の山下食品は18回、19回の連続受賞、昨年の日本一を含み5回の受賞である。
日本一の農林水産大臣賞は、昨年は愛知の山下食品、今年は三重の小杉食品。2年連続で東海組合である。 一昨年の第20回までは、農林水産大臣賞を3回受賞した熊本のマルキン食品以外は全て長野以北のメーカーであり、東高西低の様相を示していた事を考えても、東海、関西地区のここ数年の台頭には目を見張るものがある。

関西・東海地区データ変化

最近の関西・東海地区の台頭ぶりはデータ上でも表れており、今回を含む過去5回(18回〜22回)の受賞率と、それ以前(1回〜17回)の受賞率が全く違う。
1回〜17回の受賞総数170に対して、関西東海の受賞数は15であり受賞率8.82%に対し、急激に伸びてきた最近5回(18回〜22回)は受賞総数95に対して関西東海が22の受賞である。受賞率は何と23.16%にもなり、一気に3倍近い受賞率となっている。

理由の一つとして考えらるのは、毎年1月末から2月第一週に行われるミニ鑑評会であろう。鑑評会の3週間くらい前に行なわれるミニ鑑評会には、納豆文化村は 5年前の関西組合の新年会から取材をしている。当初、全国的なレベルからは少し離れた位置にあるのではと臨んだミニ鑑評会であったが、いやいや結構頑張っていた。参加者に情報収集をすると、今年は結構いいと思うとの意見が多く、色合いも糸引きも香りも、予想より上であった。その年2月の宇都宮での鑑評会では、関西東海で4社受賞。快進撃が始まったのはこの時からである。

翌年のミニ鑑評会は桑名で開かれると言う地元意識も働いてか、ほぼ全国レベルと言っていいレベルに各社仕上げてきていた。全体的に白っぽくふわっとした外観。香り要素も好ましいものに調整してきており、最近の受賞傾向に非常に近い完成度の高いものであった。そのレベルは桑名の鑑評会本番にそのまま持ち込まれ、見事に6社も受賞した。17の賞に対して35%もの高率で受賞したのである。

《 北海道復活 》

北海道も同様。有志が集まる「おいしい納豆を作る会」を納豆文化村は2010年に2度に渡り取材をしたことがある。忌憚のない意見が飛び交う様は、活気に溢れ熱意に満ち満ちていた。大豆の浸漬時間、蒸煮圧、発酵温度や時間。大豆の特性や各社独自の製造方法など。そこまで話すかと言うくらい信頼関係が出来上がっており、まさしく「正しい切磋琢磨」の姿がそこにはあった。翌年、札幌で開かれた第16回鑑評会では受賞18社中7社を北海道勢が占めた。ちなみに関西東海の快進撃前のこの時点での受賞は1社であった。

北海道勢は 札幌の7社受賞、青森5社受賞の後、18回から21回は、1、1、2、3とやや低迷。昨年「おいしい納豆を作る会」は各種事情により開催しておらず、このままでは低迷したままだと言う事で今年になり早々に「おいしい納豆を作る会」を開催。京都での開催に合わせ、関西方面、特に京都の納豆を取り寄せて試食、意見を交わして各社研究調整して臨んだ。結果、5社の受賞を果たし見事な復活を遂げるのである。

《 長野の動向 》

長野県のミニ鑑評会も盛んである。鑑評会を一ヵ月後に控えた頃に開催されるミニ鑑評会は、当然鑑評会本番に向けての最終段階と言う位置づけで行われる。納豆メーカー数社と規模こそ小さいものの関係者も集まり20名前後で毎年開催されている。長野以外の気になる納豆も取り寄せ、同じテーブルで鑑評し合い、本番への最終調整の役割をしっかりと果している。長野は納豆メーカー数社と小さな組合であり余り知られていない事だが、実は日本一を4回も取っている北海道と並ぶ超強豪県である。長野市と中野市というピンポイントの、半径15kmという非常に狭い範囲内で日本一の称号を4回も射止めているのは日本でここだけである。

《 ひきわり部門・アメリカ大豆部門 》

第22回全国納豆鑑評会の授与賞数は20であった。出展総数201点のうち、ひきわり部門には38点の出品があり、最高得点には全国納豆協同組合連合会長賞が授与される。アメリカ大豆部門には26点の出品があり、最高得点の納豆には「Red River Valley U.S. Award」が、サステナビリティ認証条件のついた大豆使用の納豆の最高得点には「アメリカ大豆サステナビリティーアンバサダーアワード」が授与される。

今年のひきわりを制したのは東京の菅谷食品。新設のアメリカ大豆サステナビリティーアンバサダーアワードは同じく東京の保谷納豆が射止めた。2社はどちらも4回目の受賞。前回受賞も第20回で2社同時受賞を果たしている。

ひきわり部門

ひきわり部門は、今年は2、3点を除き非常に高い完成度を感じさせるような特別綺麗な白っぽい色が揃い、他部門とは違う華やかな艶っぽさを見せていた。ひきわりは一般的に製造上の特別なノウハウを要するため力量のある強豪が揃うと言われているが、今回のひきわりは相対的におそらく歴史上一番の出来ではないだろうか。

アメリカ大豆部門

新設のアメリカ大豆サステナビリティーアンバサダーアワードは、アメリカ大豆を使った優秀な納豆に授与される賞で、地球にやさしいアメリカ大豆を使用している証明書を取得し、非遺伝子組み換え大豆を使用して作られた納豆の最高得点のものに与えられる。東京の保谷納豆は国産大豆を得意とする中、以前からアメリカ大豆での製造もしていたが、大豆の特性を最大限に引き出そうとの試行錯誤を繰り返し、アメリカ大豆にしっかり旨みを乗せて受賞レベルにまで引き上げてきての受賞で底力を見せた。

この2社については、農林水産大臣賞の小杉食品と同様にそれぞれ8分から10分の映像に編集している。そのインタビュー映像からは各社の納豆への強い思いやこだわりが見えてくる。

《 今年の受賞納豆の昨年との傾向の違い 》

昨年の気仙沼大会での受賞者インタビューでは、判を押したかの如く「柔らかい」と言う言葉を多く聞いた。まさしくキーワードは「柔らかい」と「もっちり」であった。 「決して固くはなく」と言う意味合いからの「柔らかい」ではあるが、気仙沼の受賞納豆には、例年より「もっちり感を大切にした柔らかさ」が実際に多かった。

受賞納豆の今年の傾向

ここ数年、少しづつ白っぽく柔らかくなり、においも控えめになっていく傾向が続いていたが、今年の受賞納豆は今までの流れと少し違った。
受賞した納豆は、色に対しての意図的なものよりも、味重視に仕上げているものに振れたようである。鑑評会場ではひきわり部門だけは2、3点の濃い色のものを除き白く綺麗な納豆が揃っていたが、他の部門は自然体の色あいが多く見受けられた。やはり会場での印象通り受賞納豆は、噛み応えのある大豆と納豆の旨みがしっかり感じられ、中身まで弾力のある、製造工程に非常に気を配ったであろう仕上げのものが多かった。

今回も受賞納豆全てを食してみたが、昨年よりも10点満点で1点分くらいは固い方に振れていた。しっかりとした噛み応えを残しながらも心地よい弾力があり、噛み進めると味わい深さが出てくる、まさにプロフェッショナルな納豆が多くあった。 香り要素はかなり抑えた好感度の高いものが多く、芳香さえ感じさせる部類のものも少なからずあった。一般的な納豆臭、アンモニア臭はほぼなく、見事に高いレベルで揃っていた。

今年の新たな特長

日数が経過すると流石にアンモニア臭が多少出てくるものもあったが、これは今までと違い許容される範囲の性質のものである。また苦みがほとんど感じられないのも今回の受賞納豆の特長である。発酵工程や熟成の関係からくる苦みがほとんどなく、賞味期限ぎりぎり或いはそれを過ぎてもしっかり旨い納豆が多かった。 相対的な出来は今までの鑑評会の歴史の中でおそらく1、2を争うくらいの全体レベルを持つ、品質の高いものを感じた。

まさしく京都という土地柄での、歴史ある文化の主張までもが審査に加味された結果ではないかと思わせるほど、日本の伝統食品の代表格としての納豆の、望まれるべき素晴らしいゾーンに入ってきたと強く印象付けられる結果となった。今後の納豆業界が非常に楽しみである

《 興味ある受賞データ 》

都道府県別受賞データ

北海道は今回5社受賞し連続受賞を17年連続と伸ばした。続くのはやはり茨城県で14年連続。栃木は6年連続、京都が5年連続。4年連続は福島と兵庫である。
過去の連続受賞では、山形県が5年。新潟、山梨、愛知、大阪、熊本、鹿児島が、それぞれ4年連続である。

納豆メーカー別受賞データ

メーカー別の3年以上連続受賞は、エイコー食品(大阪)が第15回から4年連続受賞。高橋食品工業(京都)が第19回から3年連続(4賞)内藤食品工業(北海道)が15回から3年連続(4賞)。道南平塚食品(北海道)が第20回から3年連続。笹沼五郎商店(茨城)が第19回から3年連続。相沢食産(兵庫)が第20回から3年連続である。

メーカー別受賞回数

受賞メーカーで一番受賞回数の多いのは、北海道の内藤食品工業で9回。続く8回は北海道の中田園と、熊本のマルキン食品の2社。7回は3社で道南平塚食品(北海道)、大力納豆(新潟)、原田製油(大分)である。6回受賞は5社、5回受賞は8社で、4回受賞になると13社に増えるが、ここまでの32社は受賞常連組と言っても差し支えないだろう。この4回以上受賞している32社の賞の総数は170であり、授与賞総数の実に64%を占める。

《 上質な納豆への強い思い 》

今回受賞データをまとめて感じた事であるが、共通して言える事は、お客様に美味しい納豆を食べていただきたいとの強い思いを、優秀なメーカーは総じて持っていると言う事であろうか。今まで多くの受賞者の方々の話を聞き、全国の優秀な工場を取材で回ったが、受賞納豆に携わる人には、大豆の持っている微妙な品種特性の違いをいかに正しく見極めて引き出すかという思いと、製造各工程への強い探究心や本物のこだわりがたくさん詰まっており、それらは全てお客様の為に向けられていると言う事である。

コツコツと積み上げて行く、消費者に喜ばれるよりおいしい納豆への階段は、間違いなく受賞という栄誉への階段なのであろう。このような納豆職人の気概は必ずお客様の心を強く揺さぶり、豊かで上質な日本食文化をより一層育んでいくものだとの思いを一層強くした。

《 まとめとして 》

納豆とのかかわり

筆者の本業はIT系である。インターネット黎明期の1996年初冬、大豆食品関連のデータベースを構築したことがあった。味噌、醤油、豆腐、納豆の各ジャンルの商品を紹介するもので、検索をすると該当商品の写真と説明文が出てくるという当時としては画期的なものであった。

各ジャンルとも全国の60〜80社、500点前後を掲載。4カテゴリーの商品総数は2,000点程度となっていた。この頃、全国から掲載用に送られてきた納豆は500点近く。掲載しない宣伝用の納豆まで含めると数年間で700種類近くを味見したことになる。筆者の納豆への関わりはこの頃から始まり、約20年間で1,200種類くらいを食してきた。

受賞メーカーやこだわりを持つ工場も多くを取材した。浸漬、蒸煮、納豆菌接種、盛込み、発酵、大豆倉庫等々、全ての過程から教わる事も多く、また各メーカーの納豆に対する姿勢もしっかり見えた。優秀な納豆職人の方々の話も非常に参考になり、それらは全て今回のレポートのベースにもなった。

20年前は何も知らないズブの素人だったが、やはり納豆は奥が深く幅も広い。豊かな味わいを感じさせるときもあれば、時として華やかな色合いも見せる。味わうほどに日本文化の深奥が見え、豊かな思想も感じ取れる。改めて多くの納豆賢人に感謝である。

納豆は日本の伝統食品

納豆は誰もが知っている日常の食品であるが、やはり見直すべき意義深い点は日本を代表する伝統食品であると言う事である。納豆が健康や美容にいいと言う事は常識的に知られるところであるが、若年層の興味は全然他のところに向いている事は否めない。やはり新しい文化の牽引車である若年層へのしっかりしたアプローチこそ、もっと進めていくべき課題であろう。

幸いにも鑑評会の受賞納豆は、筆者が消費者の立場としてこうあるべきであろうと思う、香り要素での格段の進歩をここ数年見せており、それは若い人を引き付ける一つの重要な要素にもなる事にもっと業界は注目すべきであろうと思う。
納豆は臭いという残念な表現は、もはや色褪せたものになっている。

日本食が見直されているとは言うものの、食は確実に欧米化へと進んでいる。 和食こそ世界一の健康食であり、納豆はその代表格。 正しい本物の食生活を、離れて行きつつある惰性の消費者を振り向かせるに値する価値を、もっと多くの人たちに知らしめる時代になってきているのではないだろうか。

2017年3月____
納豆文化村:久田隆敏

※第22回全国納豆鑑評会の関連レポート。

京都大会ダイジェスト 鑑評会審査風景
審査員コメント 受賞者インタビュー
受賞者インタビュー小杉食品 受賞者インタビュー菅谷食品
受賞者インタビュー保谷納豆 第22回受賞納豆20点
前夜祭・イベント
情勢分析と受賞納豆傾向



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